イノセント・ガーデン

韓国のパク・チャヌク監督によるハリウッド・デビュー作『イノセント・ガーデン』を鑑賞。18才の誕生日に大好きな父が死に、それをきっかけに存在すら知らなかった父の弟が現れ異変が起きる、というストーリー。ヒッチコックの『疑惑の影』を元にした脚本らしいがそこにデ・パルマの『キャリー』を足したような印象。
これまでの作品群と比べても遜色のないむしろ洗練されてさえいるのでパク・チャヌクのファンは必見といえる。異国の地かつ他人の脚本でありながら、彼らしい官能的で暴力的な作品に仕上がっているのは、それもそのはずでかなりシーンを付け足しているようだ。しかも制作スタジオからの要請で。詳しくはココ。つまり本作はハリウッドにおける習作などではもちろんないし、描写を抑えたわけでもなくフルスイングなのである。
そもそもストーリーテリングは超一流なわけだから、そこに本場ハリウッドのキャスト、スタッフが加わればよりよくなるのは至極当然といえる。中でも主役のミア・ワシコウスカはこれまでのなかでベスト・アクトと言える演技を見せている。内気な性格故に言葉数は少ないが表情で雄弁に語り、良質な生地のゆらめくスカートがそれを引き立て、冒頭で語られる彼女の「研ぎ澄まされた感覚」は大々的な伏線として機能するわけではなく、常人ではないことを感じられるよう随所にちりばめられている。直接的にエロいシーンはミア・ワシコウスカのシャワーシーンぐらいだろうか(一瞬、乳首も見える!)。だがそれ以上にピアノでの連弾シーンや靴を履かせられるシーンのエロスが勝る。
不満もないわけではない。本作は主人公インディアの一人称で語られるが中盤のあるシークエンスでそこから離れてしまうので人称にズレを感じた。ここに関してはない方がより不気味さが増したのではないかとも思う。
ともあれ少女の特殊な目覚めを描いた成長譚として傑作である。