中学生日記

ツイッター上では、中学生が妊娠した担任を流産させようとする映画『先生を流産させる会』の公開が決まったことで良くも悪くも大変話題になっているが、今回はそれとは真逆の呑気な中学生モノを紹介しようと思う。
今K’s cinemaでは「にほんのうた フィルム映画祭 〜やれることからコツコツと!東日本大震災復興支援〜」というイベントをやっていて昨日は山下敦弘監督特集だった。上映されたのは『黄金虫』『土俵際のアリア』そして『中学生日記』。『黄金虫』はPV、『土俵際のアリア』と『中学生日記』は短編ドラマだ。どれもとてもおもしろかったのだが中でもキレッキレだったのが「あるあるネタ」をドラマ化した『中学生日記』である。


ニューシネマワークショップの実習作品として撮られた本作だがその面白さは彼のメインの商業映画と見比べても遜色ない、むしろ「笑い」に特化している分「可笑しさ」では一番なのではないか。全編とにかく笑える。とにかく笑えるのである。劇場で観たときはスクリーンに映す出された瞬間に笑いが起き、そしてそれは絶えることがなかった。
5つのエピソードで構成された本作はそのどれもが自らの思い出とリンクし、またそれが王道なものであるためもし実体験と結びつかなかったとしても誰もが共感できるものだ。本作はそのタイトルに反して現役の中学生は一人も出てこない。中学生っぽくしてはいるのだが強引さはない。だからこそ面白い。逆手に取っているようで中学生にも見える。この絶妙な加減はさすがである。
登場人物には皆あだ名がついているのだが、それがいかにも中学生が考えそうなあだ名で秀逸。『先生を流産させる会』然り中学生のネーミングセンスは全くどうなってるのか。大した発想力である。本作では誰がそのあだ名を考えたのかわからないがその言語感覚をいまだに持ち続けている大人がいるとは奇跡といっていい。クラスのヒエラルキーの描き方もうまい。誰も彼もがクラスに1人はいる、無個性なようで個性的なキャラクターばかりである。これは発見というか再認識というか。当時はクラスメイトがそんなに個性的だとは思っていなかった。しかしこのような形で客観視するとそこには個性しかないといっていいほどに個性的な奴らばかりだったのである。
また各エピソードの1つ1つが1コマの授業だとすると間にあるのは……そう、休み時間だ。これもまた抜かりない。1分程度の短い時間でも“うんこネタ”“悟りネタ”など瞬発力の高い鉄板ネタが盛り込まれる。
中学生の空気感を丁寧に掬い取り、49分間爆笑必至。当時13歳だったすべての人が見るべき傑作。

 映画史に残る大爆笑映画・山下敦弘監督作『中学生日記』を、すべての観客が見逃さないための覚書


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