ヒューゴの不思議な発明

3D字幕で鑑賞。原作は本屋でちょろっと立ち読みした程度。
まず冒頭の映像に驚かされた。駅のホームからヒューゴ少年がいる時計盤の裏まで、そして歯車がひしめく時計台のその内部を流麗なカメラワークで捉え、3Dというギミックを完璧に使いこなしている。この間セリフをほとんど使わないことで映像そのものの面白さを際立たせ、またそれがこれから語られる古典の面白みであるというメッセージでもある。この冒頭が特徴的なのはカメラが動き回る長回しが用いられている点で、本編でも後々語られることだが映画初期(それこそメリエスのころ)は定点カメラで撮った映像を編集でつなげるのが映像のマジックであり面白みであったと思う(技術的にそれしかできなかったともいえるけど)。だが今はいかにワンカットを効果的に使うかが映像のマジックになっているところがあって、だからこそこの冒頭は3Dのギミックの面白さに加え現代的な映像マジックとしてのワンカットでもあるのだと思う。こういった点にも映画史の流れや変遷を感じた。……なんかわかりづらいかもしれませんが「とにかくよかったヨ!」ということです。
数々の古典がそのまま引用され、またときにそれを模倣するあたりにはどストレートな映画への賛辞/リスペクトを感じた。3Dを使うことで、当時『列車の到着』を観た観客と同じ効果を現代の観客にも追体験させたのは面白い試みだったと思う。また“駅”があそこまで映画の舞台になる(なっている)というのにも改めて気づかされた。ストーリーには若干の弱さを禁じ得ないが観るなら3Dで見るべきだ。それも前のほうで。

ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)

ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)