スペイン一家監禁事件

レンタルDVDで観賞。3人家族が引っ越してきたばかりの郊外の新居に突如、金品目当ての強盗がおしかけ家族を恐怖させる。
ストーリーはほぼこれだけ。85分間脅迫、暴力、陵辱が延々と続く。実録モノというわけではなく、社会的背景としてヨーロッパではこういった押しかけ強盗が頻繁に発生しているらしいので定番の犯罪といったところか。近いところでは『ファニーゲーム』などがある。前述のようにストーリーはいたってシンプルなもので、まぁ犯人側に計画性がなさすぎたり行動原理が不可解だったりスキだらけなんだから家族側もっと反撃できるだろ!といったツッコミもあるのだが本作の見どころはズバリその構成やカメラワークだ。
この映画、ワンシーンワンカットで撮られているのである。カット数で言えば15カットほどだろうか。とにかく徹底した長回しで、そのなかで自動車事故があり、喉元を掻っ捌き、顔面をつぶしたり銃でぶち抜くといった残酷描写をやってのけるのだ。またそのようなゴアな部分だけでなく、車外からドアが閉まっている後部座席にすんなり乗り込むといったちょっと不可能な技までさらりと披露してくる。『エンジェル・ウォーズ』の列車シーンのようにおそらくは要所要所でカットを割ってつなげているはずなのだが、リアリティ重視の作品でありながらCG感を感じさせず非常に自然につながっている。人物の登場やみせ方もうまく、目だし帽を被った犯人がそれを外すときの嫌な感じもいいし、伏線と言うほどではないにしろ犯人の中の1人や小道具を事前にさらりと登場させているのもいい。
さらにスプリットスクリーンをたくみに使い、サスペンスを引き立てる。編集上の分割画面はもちろん、画面構成としての分割もしているのが小気味良い。ラストではスプリットスクリーンから画面が合体するというかなり凝ったことまでしていて思わず唸った。
役者たちの演技も素晴らしく、唯一惜しいのがせっかく巨乳の娘のレイプシーンがありながらおっぱいがでないぐらいだ。谷間が強調された服を着てるのがよりもどかしい。
地味で小品でホラー/サスペンスというジャンルでありながらその計算されつくした撮影、編集からは品位も漂わせる佳作だ。