コクリコ坂から

宮崎吾郎監督作。吾郎ちゃんといえば前作『ゲド戦記』が大変に評判の悪いものとなってしまいました。なので今回はすごくがんばったと思います。その結果ちゃんと面白く仕上がってました。日常を丁寧に描いているところがとてもよかったです。
1963年の横浜を舞台に少年少女の恋愛と学校の文化部棟カルチュラタンの存続についての話です。
ジブリのドラマ作品でいえば『耳をすませば』なんかには全く興味ないんですがこれはかなり好きですね。何かのTVのインタビューで*1プロデューサーである鈴木敏夫が「吾郎はサービスをあまりしない。オヤジはものすごいサービスをする。」という話をしていてなるほどなと思いました。本作ではそのサービスをしない淡々とした演出が奏功していたと感じました。
父:駿のサービスの源はその「中二病」気質だと思っています。美少女のお姫様が空から降ってくるだなんてその最たる例ですね。故にファンタジックな物語が合うんですよ。それに比べ吾郎ちゃんは「大人」なんですよね。中二気質がないもんだから、ファンタジーが合わなかったんです。ところがどっこい今回はそーいう魔法だのなんだのは存在しない現実世界の話なので真面目に語れるわけですね。主人公の海を年齢の割りに随分落ち着きのある女子として描いたことも吾郎ちゃんのテンションと合致して描きやすかったのではないかと思います。お偉いさんと話すときにも変に気負わずに淡々と受け答えをする凛とした姿が特によかったです。
演出ではオープニングの起床から朝食までの一連のシーンをみればわかるように非常に手際よくやっていますし、また映画中盤あることが発覚して海は大変なショックを受けるのですが、その落胆した様子を同居人のセリフでまず観客に想像させるというのも非常に効果的でした。
あと僕、先日ジブリ美術館に行ってきたんですが、その美術館のデザインの原型は父親の断面図デザインらしいんですが*2総合的なデザインは吾郎ちゃんがやったらしいんですよ。原型と総合の違いはよくわかりませんけど、とにかくこのジブリ美術館とカルチュラタン。建物の中心が吹き抜けになっていたり、迷路のような構造が似ているんですね。吾郎ちゃんはジブリ美術館の初代館長ということもあってデザインに関してはそこが元になっているのかなと思いました。
タイトルデザインが信号旗を模しているところもいいアイディアです。今後も父親とは違うベクトルで勝負に出れると思います。次回作にも大いに期待!

*1:王様のブランチだったかな?

*2:入り口でもらうパンフレットに書かれているのがおそらくそれ