お家をさがそう

サム・メンデス監督作品。未婚のカップルの間に子供ができたものの、30半ばにして安定した生活すらしていないことに対するあせりや不安、頼りにしていた夫の両親の海外移住などをきっかけに自分たちにふさわしい居住地を探すためアメリカ各地に点在する知り合いを頼りに旅にでるロードムービー
サム・メンデスといえばシニカルなストーリーが特徴でしたが、本作はブラック・ジョークもあるとはいえ割とユーモラスでハートフルなモノでした。個人的な好みで言えば前者の作風が好きです。
主人公カップルが出会うのは皆変人ばかり。子供の前であろうと何でもござれな妻の元上司や東洋思想かぶれの奇妙な思想の夫婦(マギー・ギレンホールが熱演!そしてここでのベビーカードライブの爽快感たるや!)、理想的にも見える家族の複雑な事情など。そもそも主人公らもあまり一般的とは言いがたいところがあり、それは妻が頑なに結婚を拒否しているところです。そこには彼女なりの思想があるのですがどうにも腑に落ちるような説明はなされません。
テーマこそ深刻なものの全体的に緩やかな雰囲気で映画は進行します。個人的にはその雰囲気があまり合わなくて…。出される答えにも「あんまり元と変化ないんじゃ?」というのを感じてしまいました。環境変化に始まった旅が、いつの間にやら過去を受け入れるというところに変化しているため家=居場所を見つけたわけではなく“今の自分ら”を肯定するような話にシフトしていくあたりに違和感を感じました。旅する中で様々な家族のあり方を見た結果、理想の家庭の真似をするのではなく、自分たちらしい家庭をもてばそれが一番ということに気づいたのであればその変をも少し描かなければならないのではないかと思いました。やっぱシニカル路線でお願いします!