アウトレイジ

遅ればせながら『アウトレイジ』を観た。予告では終始「ばかやろー!このやろー!」と怒鳴り散らしていたので、肝っ玉の小ささに自信あるオレはもうそれはそれは戦々恐々として観に行ったわけだが、意外にも恐怖感というものはほとんど感じなかった。これは決してつまらないとか失敗してるわけではなく、むしろ大成功で、エンタメしていてとてもおもしろかった。
2時間弱ひたすら怒号、殺し、裏切りのオンパレード。痛々しい暴力と騙しあいの物語。群像劇である本作は出演者は主役級の人が多数でているにも関わらず、主役はいない。しいていえば暴力が主役。
そしてその暴力は殴るとか蹴るとか撃つとか、もちろんそれらも多分にあるが、そんな単純ではない、そのシチュエーションに適した非常にアイデア豊富なものが多い。ほかにいくらでもやりようがあるにも関わらず、その場のアイテムを駆使して相手を痛めつけるそのサディスティックさ。その方法と一方的ぐあいは暴力というよりもむしろ拷問といったほうが近い気がする。
一番印象的なそれは歯医者でのもの。そこのシーンでは顔をしかめながら観ていたんだけれどだんだんとおかしくなってきて「うおぉーぉぉおひゃっひゃっひゃっ」てな感じに。そのあとのあの姿にはやられた。
またヤクザの定番(?)といえば、そう指詰め。これも何度か出てくるわけだが、それがことごとく無意味。せっかく痛い思いしてやったのに「いや指なんていらねーから」と言われて持ち帰るハメになるその虚しさ。指より金。金より出世。ヤクザ界のニーズも時代に合わせて変わったわけである。とはいっても監督いわくこの話は「現代のちょっと手前くらい」の想定らしい。
そして本作では豪華な役者が顔を揃えていて、キャスティングに悩んだ(らしい)甲斐あって皆かなりハマっていたと思う。塚本高史加瀬亮の若手組から三浦友和らベテラン組に到るまでハマリ役といっていいと思う。個人的には椎名桔平が特によかった。地位は低めだが悪党らしくて、人をコケにする姿がキマッていた。あと観ていて個人的に一番スッキリしたのは、カジノでボーイやってたふと眉の青年は『俺たちに明日はないッス』の主役の子と気づいたとき。単なる高校生ヤンキーだったのに出世したなぁ。勢い余ってアレしたけど。