パーフェクトブルー

初めて観た今敏監督作品は確か深夜にテレビでやっていた『東京ゴッドファーザーズ』だったと思う。絵のタッチで敬遠する人もいるだろうが、『ジョジョ』と一緒でそんなもの気にならなくなるくらいグイグイ物語に引き込まれる。監督はインタビューの中で「アニメというと美少女とロボットものばかりだ。*1」ということを話していて、この絵のタッチ*2やストーリーはそんな風潮への反発でもある。
ストーリーはこうだ。主人公の霧越未麻は「CHAM」というアイドルグループの一人。しかしこの「CHAM」は一部のアイドルオタクから支持されているだけ。ある日、未麻に女優へのオファーがかかり、事務所の社長の強い希望もあり未麻はそれを決意する。女優の仕事は過酷なもので、それに加えてストーカー被害や近しい人間が殺され、彼女は次第におかしくなっていき・・・というもの。
題材は妄想、狂気、暴力、劇中劇、自己同一性などで、スコセッシ映画を彷彿とさせるものだった。映画の進行と劇中劇がシンクロし、観るものも主人公同様に境目がわからなくなっていく。
この映画は1998年公開で、当時の描写があるのだが、その中でもパソコンやネットに関するものが興味深かった。未麻は初めパソコンをもっておらず、ネットがなんたるかも知らない。ファンを通じてそのネット上に「未麻の部屋」なるものがあることを知り、マネージャーのルイにパソコンを教わりそこを覗くようになる。そのルイのレクチャーは視聴者のため、所謂「説明ゼリフ」でもあるのだが、この当時の人たちのパソコンやネットに関する知識は一体どの程度だったのだろうという疑問が湧いた。オレもこの頃はまだやっていなかったのでなんともいえないが、まだまだオタクやマニアの領域だったのかもしれない。
そして今回借りたのはリマスター版らしく、映像はイジっていないが音響に変更があったらしい。その音楽なのだが、これもまた『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を思い起こさせるようなものであった。

*1:大人の事情も絡んでいるらしい。

*2:大友克洋が企画に関わっているためその影響もあるかもしれない。