冷たい熱帯魚

強烈!強烈!
ス…スゴいものを観てしまった…。観ている最中グイグイと映画に引き込まれ、終始ドキドキしっぱなしで時に瞬きすら忘れ、唖然とし、驚愕し、上映終了後には頭がクラッとした。
園子温監督「家賃3部作」の1作目。新宿では連日立ち見が続いていると聞いているが、僕が観た千葉では1日1回の上映にも関わらず7人しかいなかった。しかもみんな男で1人。そんな奴らが極力いい席に、頭がかぶんないようにと中央席付近に前後1列左右1席ずつずらして座るというなんだかシュールな光景だった。
本作は'93年に起きた『埼玉愛犬家連続殺人事件』を元にしているようだが僕はこの事件を全く知らなかった*1で、この事件をかなり忠実になぞっているらしい。その証しとして冒頭「この映画は実話に基づいてるよー」というテロップが英語で出るのだが、『愛のむきだし』でも確かでていたと思うので、まぁなんというか園監督なりのジョークというか、そんな意味合いもあるのかもしれない。
物語はとにかく陰惨で、軟弱な男−社本(吹越満)がひょんなことから知り合った豪気な男−村田(でんでん)に目をつけられ事件に巻き込まれていく、というもの。随分簡略して書いたがこのストーリーがまず強烈。
さらに役者陣の演技が凄まじい。誰もが絶賛するでんでんの怪演。村田のようなおっさんは僕の近くにもいる。誰にでもうまいこと取り入って自分の思う方向にもっていく男。また社本のような男もきっと世の中にありふれている。穏便に静かに過ごすことを願う男。さらにそんな彼らを支える女優たちの脱ぎっぷりも含めホントに素晴らしかった。
とにかくそういった物語の力、役者の力、さらに音楽の力、見た目のインパクトなど物凄い力のある映画だった。また手持ちカメラ撮影によるリアリティも非常に効果的で“実話”が題材というのに説得力を持たせていた。
いろんなとこでイキすぎで笑ってしまうというのを聞いていたが僕は全く笑うことはできなかった。「あっここ笑えるとこだ」っていうのは確かにあったけれど、僕含め誰も笑っていなかったな。ただしいて言えば、若干のネタバレにつき反転で

社本の「メガネをとるとキャラが変わる」っていう古典的な展開が一番の笑いどころな気がする。メガネ=抑圧。ポスターでメガネが割れてるのは抑圧をぶち壊せ!ってことだ!僕も昔メガネが壊されたときはすごいムカッとしたからね。
観終わった直後はもう二度と観たくねぇと思ってたけど、今はまた観てみたいと思わせる不思議な魅力のある映画だった。
あと監督の映画を通してのメッセージは「タフになれ!」とのこと。*2

*1:。まぁ当時5歳だし…オウムは記憶にあるけど。

*2:なんかのラジオでの発言。